わをん

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『夢見る心』

私は生き人形として造られた。人の姿に似せられ、人と同じぐらいの大きさの私に血は通わないけれど、胸には心を模したモチーフが埋め込まれている。どうして私はひとりでに動けるのか。どうして私は心を持っているのか。彷徨い歩くうちに書物と出会い、時には話をしてくれる人とも出会い、いろんな知識を得ていった。叶いそうもない何かを願うことを夢を見ると形容するのだと知ったときに、私を造った人は私をほんとうに生かそうと夢見て心を埋めたのかもしれないと思い至った。
造った人は今はお墓の下に眠っている。私は時折お墓に訪れ、花を手向けて語りかける。
「私の夢は叶うでしょうか」
答えを教えてくれる存在がこの世界のどこにもいないことは人形でも人でも同じらしい。堅い手のひらと節くれた関節をじっと見つめて、いつの日にか人に成れることを想いながらそれを隠す手袋を身につける。

4/17/2024, 2:49:14 AM