あめのみ

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父さーん、これもう片付けちゃっていい?
おー、ちょっと待ってなー
この街に引っ越してきた今朝。海の見える高台に置かれた一軒家に子供と妻を連れて帰ってきた。ここまでなにかの流れにのせられるようにして辿りついた。
どうした?
これ、何?
あー、それ、父さんの小さい頃の日記帳だな。懐かしいな、こんなとこにあったのか。
なれた革表紙をさすりながら、何気なくその表紙をめくってみる。
途端、目頭があつくなり、じっとしていられなくなる。
いつの間にか遠くのほうに置き去りにされていた記憶が溢れ出てきて、気を抜くと涙がこぼれてしまう。

ちょうど、今の時期、初夏過ぎ、鮮明に蘇る映像を。突如として走馬灯のように駆け抜けていく。

お父さんー、こっち手伝ってよー。
陽太の声で目を覚ます。

懐かしさが残る風景。日記片手にあの頃を辿ってみようと思う。

                     あめのみ

8/28/2023, 11:03:21 AM