『風に身をまかせ』
風に身をまかせてみる。
なんて、言い訳。
「……っ」
風に煽られて、貴方の肩へぶつかる。
指先がからまった。
貴方は私の方を見ずに顔を赤くしている。
そっと顔をのぞき込もうとしたら、そらされてしまった。
「風が強くて、ごめんね」
「……あぁ」
そっと離そうとしたら、思ったよりも強い力で手を握られた。
見ても顔はそらされたまま、耳まで赤いのが見えた。
きっと私の顔も貴方と同じくらい、赤くなっているかもしれない。
「なんだか今日は暑いね」
「そうだな」
いつもは他愛ない会話がぽんぽん弾むのに、今日はなんだか沈黙が多い。
きっと酸素が薄いんだ、ドキドキ心臓がうるさい。
「少し涼しくするために水のでも呼ぶ?」
私は貴方の返事も待たずに水精霊を呼び出して、涼しくするようお願いする。
それなのに水精霊に、涼しくするのは無理だと断られる。
「だって風のも火のもいるから暑いのはしょうがないのよ」
「え、あ、ちょっ」
慌てて口を塞ごうとしたけれど、遅かった。
全て水精霊にバラされてしまった。
「道理で暑い訳だ」
貴方も赤い顔で汗をかきつつ水精霊と話しだす。
「あ、その……えと」
風も暑さも全部私の仕組んだことだと貴方にバレてしまった。
私は言い訳も出来ずにうつむく。
それでも繋がれたままの手が、いっそう強く握られた。
「……っ!」
この熱はきっと火精霊のせいじゃないよね?
5/15/2024, 6:03:27 AM