水谷なっぱ

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天国と地獄

アリスが鼻歌交じりでフライパンを振るうと、それ合わせて火の精霊があたりを飛び回り風の精霊がふわりと舞う。
「あるじ、そのうたなに?」
「天国と地獄」
「てんごく?」
「じごく?」
「「それなあに?」」
精霊たちの質問にアリスは首を傾げた。天国と地獄。オッフェンバックの名曲。しかし彼らが聞いてるのはそれではなく、そもそも天国とは地獄とはなんぞや? ということである。
「ここには天国と地獄の概念はないのかしら。つまり、死んだら行く先のことなのだけど」
アリスの返事に精霊たちは顔を見合わせた。
「ぼくらはしなないからなー」
「にんげんは、ちがうにんげんになる」
「どこにいくかは、わかんないけど」
「それはマナナンがてきとうにするから」
「よしなにね」
よしなに。アリスは呟いた。つまりこの世界は人は死んだら転生するというのが一般的な認識らしいと彼女は飲み込む。けどあとでフィンにも聞こうとアリスは鵜呑みにはしなかった。
なにしろ妖精と人間は世界の捉え方が違う。
「マナナンて誰?」
「んー、あるじがいうところの、かみさま……かなあ」
「えらい、ようせい」
「ようせいより、しぜんにちかい」
「なるほど?」
なるほど、わからなかった。
アリスが転生してきて早半年。まだまだこの世界のことはよくわからない。

5/27/2023, 11:49:40 AM