考える葦になりたい鳥

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バレンタイン

小さい頃からチョコレートが大好きだった。

チロルチョコの詰め合わせを買って、いつも一緒に帰る男の子に渡そうとしたことがあった。その日はたまたま私のほうが早く帰ったので、自分のお家の近くを通るその子を待っていた。

美味しそうなチョコレート。

我慢できなくてひとつ、またひとつと食べてしまった。待ちきれなくて自転車のカゴにチョコレートの袋を入れて、遊びに行こうとした。

その時、その子が帰ってきた。カゴの袋からチロルチョコを3粒出して、その子に渡した。
その渡し方、今想えばとなりのトトロに出てくるカンタ君みたいだったな。

ホワイトデーの日、3粒のチロルチョコは大きな大きなチョコレートマフィンになって返ってきた。何だか、わらしべ長者みたいだなと想った。



わたしにとって、バレンタインなんてチョコレートを美味しく食べるための口実にしか過ぎない。
ホワイトデーのお返しがチョコレートじゃなくて、飴とか他のお菓子になってしまうのが、とても残念だった。



昔から「好き」「嫌い」の感情が、人と少し変わっていたのかもしれない。大人になってから気が付いた。

女の子たちがキャッキャしながら、チョコレートの話をしている。男の子たちはなんだかソワソワしながらそれを見ている。

わたしは、そのどちらでもない。
だから、少しだけ、みんなの真似をしてみたかったのかもしれない。



あの子に「Like」を伝えて、あの子から「Like」が返ってきた。ただ、それだけ。



小さい頃のバレンタインの想い出。


2/15/2023, 1:20:43 AM