せつか

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〝アレ〟が白や金色の光を放ちながら空にある時、私の周りの小さな世界は温かくなり、視界が一気に広がる。〝アレ〟の名前を私は知らないけれど、あの光があることでこの小さな世界の住人は生きる力を得ている気がする。

〝アレ〟はいつも空にあるわけじゃない。空に昇り、一定の時間になると姿を消して、また顔を出す。
全く姿を見せない日もある。そんな時はこの小さな世界も少し寒くて、視界も薄暗いまま。それがこの世界の営みなのだと知ったのは、ずっと後のことだった。

〝アレ〟の名前を私は知らない。
けれど最近、〝アレ〟と同じ温かさを持つ存在がこの小さな世界を訪ねてくるようになった。
それは〝アレ〟と同じくらい輝いていて、〝アレ〟と同じくらい温かい。
私の視線に気付いたそれは、青い綺麗な瞳を輝かせてにこりと笑った。
「こんにちは」
「×××××」
柔らかな声だった。空にある〝アレ〟が言葉を話したらきっとこんな声だろう。青い瞳と〝アレ〟に似た綺麗な髪。私は一目で心を奪われた。
それは何度か〝アレ〟が空に昇り、姿を消すを繰り返す間この小さな世界にいて私と一緒に泳いだりしていたが、しばらくすると「また来年、来ますね」と言って去っていった。

空に向けて顔を上げる。
青い空の斜め上に、〝アレ〟が金色の光を放って浮かんでいる。
「また来年、来ますね」
柔らかな声が頭の中に響いた。
「×××××」
その時胸に浮かんだ感情の名前を、私はまだ知らずにいる。


END


「空を見上げて心に浮かんだこと」

7/16/2024, 2:35:52 PM