8木ラ1

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「ぐるにゃあ〜」
そう威勢良く鳴く君の頭に僕の鼻を押し付けた。
どこの香水か伺いたいぐらいに優しい匂いが僕を落ち着かせてくれる。
「この匂いはお日様から買われたんです?」
ふわふわの頭にキスを落としたあと、縦に伸びた瞳へ問いかけた。君は返事をするようゆっくり目を瞑り、また開いて僕を見る。
僕も返すように目を瞑り、またゆっくりと目を開いた。
通じたのか否かは分からないが、彼はごろんと床に寝転がり、気持ち良さそうに体を伸ばしている。
僕はそんな真っ白な腹の毛に手を置いた。そして左から右に手を繰り返し動かす。

彼には誰しもがうっとりしてしまうだろう。
どんな行動でも、どんな表情でも。
どこを切り取っても必ず絵になっている。

「僕もそうならいいのに…」
「うにゃぁ?」
呟く僕に、君はいつもの可愛らしい声で返事をしてくれた。そんな彼に微笑みながら家の窓に手を掛ける。

窓の向こうには風が流れる度に音を奏でる緑色、そして青を背景に泳ぎ続ける入道雲が大きく広がっていた。
僕はゆっくりと夏の風を鼻で味わい、肺いっぱいになった空気を口から吐き出す。
すると、そんな自然の香りに浸っている僕の横を彼が気にせず通る。そして窓枠の上で悠々と毛繕いをしてから、軽々しく外に飛び出た。
「散歩の気分かな。」
僕は彼を見て、カメラを手に取りお気に入りの帽子を深くかぶる。そして僕も同じように窓枠を力いっぱい踏んで外に飛び出る。
君は気にせず、いつも通り尻尾をゆらゆらとご機嫌な様子で歩いていた。

1/29/2025, 3:15:33 AM