帰宅したら、妻がいなかった。
部屋は真っ暗。
夕ご飯の用意もされてない。
明かりをつけ、リビングのソファに座って妻にLINEしてみる。
しばらく待ってみたが、既読がつかない。
メッセージはシンプルに、「どこにいる?」
少しずつ、不安が押し寄せてくる。
朝は何も言ってなかったな。
出かける予定があるとは聞いていない。
何か、突発的な用事でもできたのだろうか。
それでも、何かメッセージを残すくらいは出来たはずだ。
お風呂に入り、スマホを確認するが未読状態のまま。
これは明らかに…何だろう?
事故にでも遭ったのか?それとも、家出?
昨夜の自分達を思い出してみる。
喧嘩をした記憶はない。
いつもの夜だった。
…いや、何か、光を見たような気がする。
ベランダの向こう。
眩いほどの光。
あの光は…吸い込まれるような美しさを放っていた。
現に、吸い込まれたのではないだろうか。
…そしてその後、どうなった?
おぼろげに、あの時の情景が蘇ってくる。
いかにもな宇宙船内。三人ほどの異形の存在。
彼らは、私より妻に興味があるようで、私は軽く身体検査のようなものをされただけで、気付いたらリビングのソファに座っていた。
…妻は?
その時、脳の奥の方で何かが鳴り出した。
アラームのような耳障りな音が鳴り響いている。
…あれ?なんで歯ブラシが二本あるんだ?
私は一人暮らしなのに。
寝室のベットに入り、スマホを操作する。
一人寝の寂しさにLINEを起動すると、つい先ほど、私から「どこにいる?」というメッセージを送っていたが、相手が誰なのか、いくら考えてみても分からなかった。
既読はついていない。良かった。
こんなメッセージを誰とも知らずに闇雲に送っていたら、きっと不審がられるに違いない。
LINEからメッセージを削除し、何かを失ってしまったような不思議な気持ちに駆られながら、それが何故なのかも分からずに、私は深い眠りに落ちた。
9/20/2025, 3:59:33 PM