しずく

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 始まりがあるからには終わりがある。
「頭では、理解してたんだよ」
 そう唇を震わせたきみの手をとって、きみが安心するような言葉を投げ掛けたかった。
 涙が零れそうな目元を拭って、笑いかけてみかった。
「…ごめん」
 力なく放った言葉は酷く頼りなくて震えていた。
 人の生は遅かれ早かれ終点というものにつくのだ。それは俺だって理解している。
 俺はただ単にその道のりが短かっただけ。
「なんで、なんで」
 ごめん。どうしたって自分じゃ止められない。
「生きてるじゃん、生きてるでしょ。なんでなんで死ななきゃいけないの…っ」
 ごめん。
 たぶんきみは僕に謝ってほしいわけじゃないんだろうけど、今はそれしか言えなさそうだ。

「自ら終点をつくらなくたっていいじゃん…っ」

 ごめん。
 ふ、と笑ってみせて、腕が掴まれる力が怯んだところで、俺は無事に暗い海に体を沈ませた。



─終点─  #29

8/10/2024, 11:29:15 AM