佐吉智明

Open App

4.眠れないほど

―――何かに熱中してみたい。
眠れないほど興奮して、一晩中集中してみたい。
きっとそれは愉快で楽しいことなんだろうな。
そういうことが僕にもあればなあ。

ひとつのことに熱中できたらきっと他のことにも熱中できるようになる。
君が楽しそうに話すのを見て、僕は少し悲しくなる。
君が悪いんじゃない。
僕のただの妄想で、勝手に焦っているだけだ。
僕には熱中できるものがある君の背中がまぶしいんだ。
いつも僕の一歩前を行く君は、いつも僕を焦らせる。
君のその姿を追いかけてばかりの毎日だ。
でもそんな日々も好き。
君といる時間は心地よい。

風が吹いた。
僕はいま、君を見習うことに熱中している。
それは夜も眠れないほどに愉快なことだ。

12/6/2023, 10:00:16 AM