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「幸せになりたい」

誰もが口ずさむ言葉に疑問を感じていた。


"幸せに"とは?

世間的にそれは
「家族と」「恋人と」「皆で」
と連ねて言われる事が多い。


"誰か"
他人と共有する事で成立している様な

そんな印象から
自分には分かりえない事なのだと思っていた。


「幸せになりたい?」

「幸せにしてあげようか?」

その声はどこからともなく突然聞こえてきた。

中性的な声。
声から姿が想像出来ない。


返答は決まっている。

「うん」

未知の事に興味が無いわけではなかった。

皆が言う"幸せに"
自分もなりたかった。


「わかった」

返答が返ってくると同時に
視界は暗闇から照らされた世界へ
見慣れた景色へと変わっていった。


「あら、おはようございます」

「眩しかったですか?」

「朝食の準備をしますね」

聞き慣れた声を聞いたせいか、
夢の中で聞こえた声が
これまでに聞いた事のない声
"だった"という事を
さらに強調された様な感覚。


身支度を済ませ
朝食が並べられたテーブルへ着く。

普段と違う香りの紅茶。

気になったまま紅茶を手に取り口に含む。

すると
その行動が面白かったのか
こちらを見ていた彼女が微笑んでいた。

3/31/2024, 2:16:11 PM