光と影
街灯だけが頼りの夜明け前に、少しだけ顔を出した太陽が、薄ら明かりを差し込ませている。
この世に、光と影が綯い交ぜにされ、その境界が曖昧になる。
この時間は1日に一瞬だけ。今日なのか明日なのか分からない時間を、夢見心地で過ごす。そんな時間が、私は好きだ。
冷たい空気を肺の奥まで吸い込むと、微かに夜の底の匂いがした。アスファルトに落ちる私の影は、街灯のオレンジ色と、朝日が帯び始めた白っぽい光とがぶつかり合い、淡く二重に滲んで揺らいでいる。
遠くの方で、鳥の羽ばたきとも、始発列車の走行音ともつかない低い音が響いた。それが合図であったかのように、空の青がじわじわと透明度を増していく。街の輪郭が少しずつ鮮明になり、魔法の時間は本当にあと数分で終わろうとしていた。
光と影が完全に分離し、すべてが白日の下に晒される前のほんのひととき。私はただ立ち尽くしていた。やがて容赦なく始まる「今日」という現実に足を踏み入れる前に、この曖昧で優しい世界の温度を、もう少しだけ肌で覚えておきたくて。
10/31/2025, 3:29:35 PM