真っ白な空間。壁も床も天井も、触れば存在するけれど、触らなかったら何処まで続いているのかすら分からないような、真っ白い部屋。
立って手を伸ばせば天井に手がつくし、床だって、地面に立っている感覚がある。両手を広げれば左右に手がついてしまう程の、狭い空間。
「 」
声を出したつもりだったが、音という概念が抜け落ちているかの様に自分の声が聞こえなかった。
暗転。
真っ黒な空間。影が存在して、立体的な空間がはっきりと分かる。黒いのに、何故か視界は良好。光がないはずなのに、世界が見える。
…少し、息苦しい。呼吸をすればするほど酸素が徐々に無くなっていく。何時間ここにいるのだろう。苦しくて、体温が分からなくなって、目の前がフェードアウトする。
……そういえば。
自分のいる真っ白い部屋の正体を思い出す。
生と死の狭間。三途の川なんておしゃれなもんじゃない。何も無い空間。
体が透け始めて、記憶が抜け落ちていく。
最期に、普通の部屋に居る自分を想像して少し微笑んだ。
『狭い部屋』
6/4/2024, 11:07:12 AM