『時を繋ぐ糸』
昨日は祖母の命日だった。
私のおばあちゃんは祖父の遺影の前でよく編み物をしていた。
子供の頃はおばあちゃんと祖父がちゃぶ台を囲みみかんの皮を1枚1枚ゆっくりと剥き、他愛のない会話をしていた。
いつも無口で何を考えているのか分からない祖父だったが、祖母の前では優しく笑い、今思えばすごく恥ずかしがり屋さんだったのだろう。
ほほほ、とほんのりと頬を赤らめて祖父の話をするおばあちゃんはいつも嬉しそうだった。
ずっと昔から何かを編んでおり、何を編んでるの?と聞いてもおばあちゃんは貴方が20歳になったら教えてあげます。としか言ってくれなかった。
もどかしくて、早く大人になりたい!と、母の化粧道具を勝手に使ったり、父が好きなお酒を飲んでみたりと、ものすごく怒られたが、母も優しく頭を撫でてくれ、父も、最後は笑っていた。
そんな小学時代を過ごし、中学、高校、とあっという間に時間は過ぎ去った。
恋をしたり、喧嘩をしたり、泣いたり怒ったり、でも、最後は笑っていた。
祖母は相変わらずずっと何かを編んでいた。
でも、最近は寝てる事の方が多くなった。
母は、「お母さん」と悲しそうにおばあちゃんの手を握った。
祖母は最期に、お誕生日おめでとう、当日に言えなくてごめんなさいね。と言ったらしい。
目を赤く腫らした母が言っていた。
そして、母の手には祖母がずっと編んでいた純白のヴェールが握られていた。
11/27/2025, 5:33:20 AM