月に住む猫

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「愛と平和」


「どうかな、芝生湿ってるかな?」
彼女は芝生に掌を押しつけて、
座っても大丈夫か確かめた。
「大丈夫そうだね。ここらへんにしようか!」
そういうと、ピクニック用に買っておいた
チェック柄の大きな布を広げ、荷物を下ろした。

2人であれこれ言いながらピクニックの準備を整える。
念願の日が来た彼女は、とても楽しそうで
今日もまた2人の素敵な思い出が増える予感がした。

支度を終え、2人で並んで腰を据える。
春の日差しは暖かく、風はない。
何処からともなく、花の香りがして
冬はもう終わってしまったんだなぁと感じた。

そんな事を思っていると、彼女が俺の顔を覗き、
にこっと微笑みんだかと思ったら、不意に立ち上がる。
「ねぇ、立って立って!」
俺の両手を握り、軽く引っ張るようにして立ち上がらせ、
布を敷いていない芝生へと誘導した。

「今日、全然人いないからさ、寝転んじゃおうよ!」
彼女はまるでイタズラをする子どものように
無邪気に笑い、俺の返事を待たずして芝生へ寝転んだ。
「いいね、寝転ぶの」
俺も彼女の真似をして、隣に寝転んだ。

脳天からの狭い角度からではなく、
全身で日光を浴びるのはいつぶりだろうか。
身体の隅々までポカポカして、とっても心地よい。
地面が近いから、土や草の匂いがする。
身体全体で様々なものを感じ取っている感じが堪らない。

「気持ちいいね〜!」
彼女は伸びをした後、ころんと俺の方を向き手を握った。
「こんなに物が溢れてる世界でもさ、
芝生に寝転ぶだけで、こんなに気持ちが洗われるのって
なんでなんだろうね?
なんか、こう、世界はとっても平和だなって感じる!」
「はは。俺は世界の事なんてわからないけどさ。
でも、このまま俺たちだけでも平和に、不自由な事なく、笑っていられたら嬉しいなぁとは思うよ」
普段の会話では言わないような事を口にしたからか、
彼女は不思議そうに俺を見た。

でも、俺にとっては世界とか本当にどうでもよくて。
この愛しい人と、こういう平和があれば生きていける。
決意とかそう言うのでもなく、ただ心からそう思った。


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3/10/2023, 4:35:57 PM