テオの夢って、なぁに?
無邪気に聞くシャルに、僕は何も答えられなかった。だって、夢を見る暇のない人生だったから。
母星を離れた今、自由の身を手に入れた。だからこそ、見たい夢がある。そう気づかせてくれる質問だった。
地球に行く。
それは僕が描いたものではない。母星を出ることさえ許されない親友の、一生かかっても叶わない夢。僕が代わりに叶えても、いいんじゃないかな?
そうと決まれば、早速準備に取りかかろう。先ずは宇宙船の手配から。僕が乗ってきたものは壊れている。修理……というか、リサイクルになるのかな。一から作る可能性も想定して、早めに製作を開始した方がよさそう。一人旅になるから、操縦も学ぶ必要があるか。整備士のノウハウも必要だな。
とにかく、僕だけでどうにか出来ることではない。この星一番のメカニックに事情を説明した。
「なんだって!? お前、地球に行きたいのか?」
「はい」
「まあ、お前が乗ってきた宇宙船を修理すりゃあ、行けるかもな」
「それをゲンさんに頼みたいんです」
「やなこった。アイツに見つかったら、俺が処刑されちまう」
アイツとは、所長のことだろう。異様に頭が大きい容姿とは裏腹に、脳ミソはめちゃくちゃ小さいって噂だ。その小さな脳に詰まっているのは、規律と礼儀のみなんだとか。実際のところはわからないけど、所長がルールに厳しいのは確かだ。
「所長の許可を取れば、やってくれますか?」
「ムダムダ! 賭けてもいいぜ」
ゲンさんは取れない方に賭けるらしい。でも、僕は取れる方に賭ける。
「もし許可が取れたら、修理費を無料にしてください」
「おう。修理費だろうが、部品だろうが、なんでも無料にしてやるよ。許可が取れたら、の話だけどな!」
ガハハと笑うゲンさんに、少しだけイラッとした。まあ、いいさ。今は笑わせておけ。
「約束ですよ?」
「もしお前が負けたら、一ヶ月分の酒を寄越せよ」
「……いいでしょう」
問題は山積みだが、ひとつずつ片付けるしかない。地道な作業が結果に繋がると信じて、第一歩を踏み出す。いざ、夢へ!
4/10/2025, 6:16:26 PM