「あ、あのさ、」
勇気を振り絞って言った誘い文句。
自分でも思った以上に緊張していた。
人生で一番、怖かった。
断られたら、拒否されたら、そう思うと胸が痛くて、すぐに壊れそうで。
それでも「君は断らない」と思った。
だって君は優しい。こんな僕にも良くしてくれる。
だから、今日こそはちゃんと。
自分の口で自分の言いたいことを言わなければ。
臆するな。さあ言え。言え。
「僕、実はさ……!」
「うん」
「殺し屋なんだよね」
「………えっ、」
「過去一怖かったよ、お前がひどく残念な死に方をしちまうんじゃねぇかってなァ」
「断れないイエスマンは時に誰かの心を抉るんだぜ」
「へへ……もう死んでっから聞こえねぇよな」
「ああでも、一番最後まで機能してる五感って、耳なんだっけかァ?」
「お前のこと殺してくれって頼んだ奴は、泣いてたぜ」
「それでお前と同じ血を流す者が自害した」
「『あんな子を産んでごめんなさい』ってなァ」
2025.9.6.「誰もいない教室」
マジでね、学生とかやってらんねぇっすよ。
9/6/2025, 4:21:47 PM