信じられないような美しい夕焼けだった。
紫と青紫の雲を連れて、最後の朱色が大地を撫でるように染め上げている。
薄暗い遠くの空には膨大な魔力と、空を飛ぶ飛竜が時折り見えた。
これが世界の終わりだと言うのなら、なんて残酷なんだろう。
「夫婦になった途端にあの世行きなんてなぁ!笑えねぇよ」
酒をかっくらったドワーフ達は、巫女であるという素性を信じ切って、少女の周りを囲んだ。
「産めや増やせや大地を染め上げし我が王国」
「そうよ!」
「そうでなきゃならねぇ!」
酒が入ったドワーフたちは士気が上がり止まらない。それぞれの斧が高く担がれる。金物がガシャガシャと音を立てる。
一方人間たちを率いてきた、王宮魔術師である肩書きの青年も、人々の中心にいた。
「貴方に神のご加護がありますように」
「かならずお帰りください!」
「お願いします、勇者様、魔道士様!」
少しの休養ののち、勇者一行と魔術師である青年と仲間たちも、人間たちに送り出されるところだった。
「帰ってきたら…うちの村に住みなよ、あんたみたいな気さくなのは、ぜんぜんお貴族様とは思えない。私たちを見捨てた領主様の代わりに統治しておくれよ」
「そうだよ、まだ婚姻の祭りだってあれで終わりじゃないんだ盛大にやろうよ」
ありがとう。と青年はにっこりと町の婦人たちに返した。
確かに自分は王宮から来たが…。それは村を生贄に魔族と契約を結ぶためだったなんて言えない。
ここを違えば魔族たちと拮抗していた力関係は一気に崩れる…。それが自分たちは見過ごせなかった。
冷たい風が暗闇を呼んでいる。
ゆっくりと巫女の少女が杖を片手にやってくる。栗色の豊かな髪を持つ、精霊のような魂を感じる少女だ。元は…地球人…日本人とか言っていたかな。
「参りましょう」
「そうだね、奥さん」
この言葉に彼女は真っ赤になった。
かわいいな、と思って、青年は手をとる。
仮初の結婚だったけど、村人、勇者一行、仲間たち、ドワーフ達、精霊たちが一丸となった。
「水よ…」
「炎の精霊よ、我が手の契りとなり…」
2人の魔力と精霊力が空で混ざる。夕陽の中カーテンのように、淡い光のヴェールが広がった。
ドワーフ達が閨の声を上げる。
人間達が結界の張られた森に戻り、勇者達はそれぞれがバフ魔法を掛け始める。
戦は始まった。
夕闇と魔力の光のヴェールが混ざり合う不思議な紫の世界で。
美しい夕焼け
4/7/2026, 9:58:13 PM