三神狐

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全長250m、収容人数5万人の巨大な船『ノア』は、
その製作者から「未来への船」と称された。

『ノア』は、人間によって枯れ果てた地球を離れ、人類が平和に暮らせるとされる惑星へ移動するための手段であった。
その船の搭乗員には、有名・著名人、政府の主要人物、科学者、人間国宝といった、人類の存続に欠かせない存在が選ばれた。
「未来への船」と華々しく銘打ってはいるが、これは人類の選別だ。残された人類は皆見捨てられたのだ。と選出されなかった人間は叫んだ。
選ばれた政治家はその声に耳を塞いだ。

さて、いよいよノアが飛び立つ時がきた。
「さようなら」
「元気で」
と残された人類は手を振る。
その瞳の奥には、『取り残された』という絶望が揺らめいている。母親の手に抱かれた赤ん坊は、愉快そうにノアを見て笑った。
ノアが発ち、その姿が雲に紛れたと思ったその時、
巨大な爆発音が響いた。
青い空は一瞬で赤く染まり、数秒遅れでまばゆい光が辺りを包み込む。

数秒後、空が晴れた。
まるで何も無かったかのように、まばらな黒い雲が浮かび、太陽が照りつけている。
ただ、その中に小さく、何かが燃えながら地上へ落下している。
ノアだ。
爆発したのはノアだった。
人類はそれらを自然と理解し、「未来への船」が落ちる様を、無表情で眺め続けた。

5/11/2025, 2:16:19 PM