裏返し
封筒が届いた。死んだ友人から。詩人の友人から。
封を切りなかみを出す。2枚の紙。
1枚目。僕に対する感謝の詩が並んでいた。抒情詩、というより叙事詩。まるで僕を英雄のように詠んでいる。もちろん彼なりのユーモア。死んだあとでも、僕の心を躍らせる。
2枚目。
愛の支柱 樫と思えど実はポプラ
ひ弱な力で屋根も傾く
すきま風がロマンスを枯らす
涙が明日を隠す
テーブルの上 レプリカのりんごひとつ
おいおい。僕は紙を裏返して机に置いた。
来週、彼を偲ぶ会に出る。どういう顔で、彼の妻に会えばいいのか。
1枚目で持ち上げ、2枚目で困らせる。きっと僕があたふたしてるのを、空から眺めて楽しんでいることだろう。まったく、彼にはいつもからかわれてばかりだ。
8/22/2024, 9:55:04 PM