故郷を出てから、ずっとこの車で走り続けた。
最初は三人、楽しい旅路だったけど、都で二人を下ろすことに決めた。この車はここよりずっと幸せな場所に行く気はしてなかったから。二人は今幸せなのだろうか。他の人に盗られるくらいだったら、親友に妹を任せたい。
そしてそのすぐ後に、一人の子供が乗った。勝手に乗り込んだらしく、この先へと連れて行くしかなかった。これ以上連れて行きたくない、そう思っていた矢先、子供はいなくなった。彼は神様だった、今ではそう思っている。
ばあさまの言いつけや村の風習で始まったこの旅だが、どこに向かっているのかずっとわからないままだった。でも、ようやくその意味がわかるのだ。
車は極限まで、いやそれを超えて速度を上げているようだった。車体は軋み、大きなエネルギーが生成されては、吐き出された。
幾日か前の休憩をとってから、どれだけの時間が経っただろう。今にも崩壊しそうな車体は爆音を立て始めた。
ただ、何も感じないし、考えることもなかった。ハンドルをつかむ手に意識があるはずもなく、儚さのようなものが身体を駆け巡ることもある。
この先に答えがあるかもしれない、という高揚感はもう薄れていた。
そのとき、車体の屋根に付けられたプロペラが回り始めた。
旅の中で集められてきた力が、今解放された。
1/31/2024, 11:58:59 PM