二人だけの。
午後7時
ここからもう一踏ん張り
入れたコーヒーにほっと息を吐き
見たくもないパソコンにふんと、気合を入れて向かう
残業って非効率
頭は時間を追うごとにスリープモード
午後8時
まだまだ頑張らなきゃ
午後9時
もう帰ってもいいですか?
午後10時
心が折れそうです
昨今のエス……なんちゃらで、
節電節電
自分の席の区画だけが明るく浮かび上がる
広いオフィスはちょっと不気味だ
かたん、という音に震え上がれば
こんな時間に見慣れた営業
あちらもこんな時間までとビックリ顔
二、三言交わし、それぞれの仕事へ
ねぇ、と声をかけられ振り向けば
ひょいと飛んでくる小さくて、赤い包み
慌てて受け取れば
なんてことないチョコレート
「ありがと」
そういえば、彼はにこっと笑い再び
パソコンに向き直る
二人だけのオフィス
二人だけの残業
たまたま
悪くないかも、
なんて思ってしまった
いや、嘘です帰りたい
7/16/2025, 2:23:38 AM