列車の窓から外を眺めていると、
隣にかけた女の子が人さし指をたてて言いました。
私の秘密の箱を見せてあげるわ
目をやると女の子の膝には小さなお花の飾りのついた箱がありました。
ママが持たせてくれたのよ
そっと蓋をあける手元を見つめていると中には色とりどりのキャンディがいっぱい
女の子はキャンディをひとつ手に取り、口に入れると言いました。
あなたの箱は何が入っているの?
自分のもとには女の子のものより一回りは大きい箱がありました。飾りはなく、中にキャンディも入っていません。そのかわり、きらきら輝く硝子が組み合わさって、うっとりするような美しい箱でした。
中身は秘密なの、でもね、きっといつかわかる日がくるわ。そんな気がするの。だから、それまでごきげんよう!
箱が壊れてしまわぬように、そっと抱えて、ひとり列車を降りました。空は昼間だというのにどんより曇っていて、まるで夕暮れのようでした。
けれども、なんとも不思議な心地です。この美しい細工の箱を持っているだけで、ぽかぽかあたたかくなるような、まわりが明るくなるような、ともかく幸せな気持ちになるのです。
さて、どちらへ行こうかしら?
箱を抱えてどこまでも遠くへ向かえるような気がします。雨が降りそうだけれど、それでもきっと大丈夫。
行くあてもなく歩いていくことにしました。
いつまでも、どこまでも、どこか素敵な場所に辿り着くまで。
10/24/2025, 12:12:54 PM