せつか

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「どうか私と結婚してください。きっと幸せにしてみせます」
王子様が言いました。
お姫様は首を縦には振りませんでした。
王子様が帰ったあと、王様が尋ねます。
「姫よ、なぜ結婚に応じないのだ?」
お姫様は答えました。
「具体的にどう幸せにして下さるのか、分からないからです。それに、わたくしの幸せが王子様の仰る幸せと同じかどうかも」
お后様が尋ねました。
「姫よ、あなたが思う幸せとはどんなものなのです?」
お姫様は少し考えるようなし仕草をして、こう答えました。
「わたくしを裏切らないことです」

隣国の姫は流行り病で王子様を失いました。
海の向こうの姫は戦争で王子様を亡くし、自身も捕らえられたと聞きます。
はるか昔の姫は王子様が別の女性を好きになって、捨てられてしまったそうです。

戦争も、災害も、流行り病も、心変わりも、仕方ない事だと思います。それ自体が辛いのではなく、それで王子様を失うこと、永遠の幸せを約束しながら、わたくしを置いていってしまうことが悲しく、許せないのです。そんな辛い気持ちを味わうくらいなら、わたくしは結婚なんてしたくありません。

「姫よ·····」
王様とお后様は聡明な、けれど頑固な愛娘がどうすれば幸せになるのかと、頭を悩ませるのでした。

END


「幸せに」

3/31/2024, 3:29:25 PM