【ないものねだり】
私の友達のエマは、ぱっちりした二重瞼の目が特徴の可愛い女の子だ。
一重瞼で切れ長の目をした私は、幼い頃からずっと、そんなエマの目が羨ましかった。
けれど、最近エマと二人で買い物に行った時、びっくりしたことがあった。
化粧品コーナーを見ていると、鏡が備え付けてあったので、私は用もないのについ覗き込んだ。
私の目は、隣に居るエマの目の三分の一ほどの大きさに見える。すでに分かっていることだけれど、こうして見てしまうとやっぱり落ち込む。
でも、私と並んで鏡を見ていたエマが言ったのだ。
「いいなあ。ハルカは鼻が高くて」
「えっ……?」
「私、鼻が低いのがコンプレックスなんだ」
言われて鏡をよく見てみると、確かにエマの鼻は可愛らしくちょこんとしているが、高い方ではないかも知れない。
自分の鼻が高いことは、時々周りから言われて自覚していたけど、あまり深く考えたり、誇らしく思ったりはしなかった。むしろ、エマみたいな目だったら……と自信のない目のことばかり考えていた気がする。
「私は、エマの目が羨ましいよ」
「目!?」
「小さい頃からずっと、エマみたいな目に憧れてたんだ」
「えー!私、小学生の頃は男子にギョロ目とか出目金とか言われて、目のことでからかわれてたよ!」
「そうなの?」
話を聞いてみると、エマは成長するにつれて目を褒められることが増えたが、子供の頃の経験もあって自分の目に自信を持っているわけではないようだった。そして私とは逆に、コンプレックスの鼻のことを考えてばかりいたらしい。
「そっか……知らなかったなあ」
「ハルカみたいな顔だったら良かったって、何回も思ったんだ」
「嘘でしょ!?」
だって、エマは可愛いから私の三倍くらいは男の子にモテるのに。けれど、エマは「誰かが褒めてくれても、自分は気に入らないの」といって力無く笑った。
――それから五年。
エマは、整形で鼻を高くした。本人には言えないが、まるで魔女の鼻みたいだ。
今のエマは男の子には全然モテなくなったけれど、幸せそうに笑っている。
3/26/2024, 11:20:06 AM