ああ、まただ。また君はそうやって知らぬ振りを決め込むのか。
逸らされた視線に舌打ちする。
「水臭い」
タイムリープ三回目。
二回失敗したから違う手法を、という思考回路をしたところまでは理解できる。
けれどもここへ来て、相棒の僕を切り捨てようってのが気に入らない。
ここは君と僕の出会いの場所なのに、この分岐点を無かったことにしようなんて、一体どういう了見か。
大方僕を未来の危険から遠ざける目論見もあるのだろうけれど、そんなの知ったことか。
まったく大きなお世話である。
独りで問題を抱え込んで突っ走る。
相変わらずの君の悪い癖を見て、皮肉ながらに安堵さえ覚えたさ。
それでも、それを放っておけない性分なのも、僕だって変わらずのところである。
一度は君の意志を尊重して、影からのアシストで見守ろうかとも思ったよ。
でも、無理。やっぱり止めだ。
しびれを切らして、雑踏の奥へ消えた彼を追いかける。
程なくして、足早に先を急ぐ相棒の後ろ姿が目に留まった。
追い付くや否や、後ろから二の腕を掴み、有無を言わさずに僕の方へと振り向かせる。
「やあ。初めまして、じゃないよね? タイムリープしてるの、自分だけだと思ってた?」
やっと目が合った、彼の瞳が大きく見開かれる。
この期に及んで「どうして」なんて呟くものだから、散々無視された腹いせに意地悪をしたくなったのは許して欲しい。
驚いた瞳に僕の顔がよく映るよう、体ごとぐいっと引き寄せ向き合った。
もう、逃がしはしない。
君の相棒は、僕しかいないだろう?
「残念でした。さあ、仕切り直し! 作戦会議といこうじゃないか!」
今一度、目を逸らさずに。
僕らの未来を切り開こうか。
どんな道でも、お供するよ。
(2025/05/04 title:076 すれ違う瞳)
5/5/2025, 4:34:33 AM