小林 薫子

Open App

腹が立ったら酒に限る。

 腰を下ろした雰囲気のいいバーのカウンターで私は注文した。
「おすすめください!」
「色々揃えてますよ。ブラッディーメアリー、オールドファッションド、モスコミュール…それから」
「モスコミュールで」
 カクテルは詳しくないのだ。知っているカクテルを注文した。
「かしこまりました。」
 
砂時計形をした銀製のメジャーカップに、
 赤字で「VODKA」と書かれたお酒を、氷の入った細い円柱型のグラスに注いでいる。
 鮮やかな緑色のライムをくし形にカットして絞り、グラスの淵に回転させて滑らせていた。
 
緑色のビンに入ったウィルキンソンのジンジャエールを、こぼれないように銀製のマドラーの背で伝わせながら注ぎ入れた。スポットライトの真下でジンジャエールがきらきらと輝き、グラスに入っていく。バーテンダーは混ぜたお酒を手の甲につけて味見をした。
「どうぞ」

「わっすご」
 光るコースターだ。下から放たれた光でモスコミュールが黄金色から虹色になった。

「カクテル占いをしますか?」
 バーテンダーが言った。
「花言葉があるようにカクテルにもカクテル言葉というものがあるんです。ちなみにブラッディーメアリーが『断固として勝つ』オールドファッションドは『我が道を行く』です」

「モ、モスコミュールは?」

「『仲直りをしましょう』」

 バーテンダーは眉を上にあげた。

 私はポケットからスマートフォンを取り出した。

 
 

5/1/2026, 5:41:45 PM