雨が ぱら ぱらと降りこんで
マンホールの蓋に映る ぼくの顔が揺れ動く
まるで にらめっこを しているみたいだった
お気に入りの黄色い長靴でもないのに ぼくは
小さなみずうみにダイブした
ずしゃり、と音がして
なんとか踏ん張った
靴下が 足が ふと 重くなった
◇
そんな梅雨が終わり 夏休みがやってきた
朝顔を 種から育てましょうと
先生は言った
こんな小さな粒から 花が咲くはずなどなく
先生は愉快な人だなと 感じていた
◇
それから毎日 絵と日記を書いた
たいして 変わり映えもせず
やはり先生は嘘つきだと ぼくは一人でうなづいた
水やりにも 飽きてしまって
ぼくは 塩素の匂いがする
大きなプールに通いつめた
◇
ラジオ体操のスタンプが まばらに溜まってきた頃
ふと朝顔をみると
しおれて うつむいてはいたけれど
花が 咲いていた
その小さな 小さな 主張に
ぼくは 蚊が血を吸おうとも 動けなかった
ただ しばらく 動けなかった
7/23/2023, 10:50:09 AM