鶯になりたかった鳩

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雨が ぱら ぱらと降りこんで
マンホールの蓋に映る ぼくの顔が揺れ動く
まるで にらめっこを しているみたいだった

お気に入りの黄色い長靴でもないのに ぼくは
小さなみずうみにダイブした

ずしゃり、と音がして
なんとか踏ん張った
靴下が 足が ふと 重くなった



そんな梅雨が終わり 夏休みがやってきた
朝顔を 種から育てましょうと
先生は言った

こんな小さな粒から 花が咲くはずなどなく
先生は愉快な人だなと 感じていた



それから毎日 絵と日記を書いた
たいして 変わり映えもせず
やはり先生は嘘つきだと ぼくは一人でうなづいた

水やりにも 飽きてしまって
ぼくは 塩素の匂いがする 
大きなプールに通いつめた



ラジオ体操のスタンプが まばらに溜まってきた頃
ふと朝顔をみると 
しおれて うつむいてはいたけれど
花が 咲いていた

その小さな 小さな 主張に
ぼくは 蚊が血を吸おうとも 動けなかった
ただ しばらく 動けなかった

7/23/2023, 10:50:09 AM