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やはり僕では、君に勝てないのか。

酷い土砂降りの中、僕はそう呟いた。離れてゆく君の姿は、水の壁に阻まれてもう見えない。
もう何時間もここにいるような気がする。膝を着いた足を鎖で繋がれて、動くことが出来ない。
思えば、最初から僕に勝ち目なんてなかった。ただ、君が少し残酷だっただけだ。勝ち目のない僕に、この小さな戦いから逃げることを許さなかった。

「お前が逃げないことを選んだんだ。誇りに思うといい、まだまだこれからも、私たちは共に歩む」

ふと顔を上げると、やはりいつものように君は不敵な笑みを貼り付けて僕を見下ろしている。
太陽が、湿気た空気を全て吹き飛ばした。
…勝ち目のない戦いを、僕はまた始める。

僕は笑って、君の手を取る。

空に虹などかかっていない。
もしかしたら、雨など降っていなかったのかもしれない。

8/19/2023, 11:19:01 AM