よつば666

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お題『そっと』(『あたたかいね』の続きの話です)

 1時間後大神が船星(ふなぼし)の食べた食器を下げに2階の部屋を訪れた。コンコンとドアを叩く。返事がない。寝ているのだろうかとそっと部屋に入る。

大神「船星〜。部屋入るでぇ」

予想通り船星は寝ていた。……が、何やらうなされているみたいで時折『うぅっ』と唸っている。
大神は船星の額に触れた。熱い。

大神「熱あるやんか!冷えピタ!買ってきたスーパーの袋の中にあったわ。ちょー待っててや。取って来るさかい」

ささっとサイドテーブルから小鍋と豆皿等の乗ったお盆を下げ、1階の台所の流し台へ置き小鍋の蓋を開けた。船星は具材は全てたいらげていた。強いていうなら出汁は少し残っていたが大神的に許容範囲で満足げだ。小鍋に水を張る。後で洗おう。今は一刻も早く冷えピタを持って行かねばならない。

冷蔵庫の扉を開けガサガサとスーパーの袋を取り出し、冷蔵庫の扉を閉めた。取り出したスーパーの袋からから冷えピタを持って2階へ駆け上がる。
船星の部屋のドアを開け、静かに船星の側に近寄る。
ハァハァと呼吸が荒くなっている。近くにタオルがなかったので、ティッシュで額の汗を拭う。そして冷えピタを1枚箱から取って透明の薄いシートを剥がし、青色のジェルのついた粒々が肌に触れるように船星の額にそっと貼る。
寝ていた船星が気づいた。

船星「冷たくて……気持ちいい」

大神「せやろ」

船星に笑顔を向ける大神。船星は起き上がろうとしたが大神がそれをさせなかった。

大神「病人は寝とくもんやで!無理に起きやんでええんや」

船星「……ごめん」

大神「気にすんなや。体調悪い時くらい他人に甘えんとそうしな……。!?あかん、話暗くなる。やめや、俺、今日船星の家泊まるわ!」

船星「そ、そんな。これ以上大神に迷惑かけられないよ。それに大神の家族の人が心配するだろうし……」

船星は大神から顔を逸らした。

大神「あのなぁ。そんなん電話一本で済む話や。居場所さえわかっとら大概の親は何も言わん。それに俺の家族のことなら心配せんでえぇ。逆に病人ほっといて帰る方が親に怒られる(どやされる)わ(笑)」

大神は苦笑いをして船星の部屋をあとにした。そして1階へ降りて台所の流し台へ向かい、食器を洗う。洗い終わるとGパンの後ろポケットから携帯を取り出して家の電話へかける。

大神「あぁ。おかん、俺。天河(てんが)。今日さ、友達の家に泊まるわ。……うん……そう。なんや体調悪いみたいやから看病して明日帰って来るわ。小真莉(こまり)には上手いこと言うといてや。ほな」

End

1/15/2025, 5:34:03 AM