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星が溢れる(オリジナル)

「どうじょ!」
喫茶店で、突然声をかけられた。
声の方を向くと、見知らぬ幼女。
彼女の手が、僕に向かって差し出されていた。
手のひらには一粒の小さな星のかけら。
白い金平糖だった。
「…くれるの?」
「ん!」
彼女は満面の笑みで、手を突き出してくる。
「お星さまがあふれたときにはね、ママがくれるの。しあわせをあげるって!おにいさんにもわけたげる!」
「あ、ありがとう?」
彼女の母親を探して周囲を見回すが、それらしき人が立ったり、こちらに来たりする様子はない。
僕は彼女の手のひらから金平糖の一粒をいただいた。
「えへへ」
彼女は嬉しそうに笑い、こちらに手を振りながら、走り去っていった。
その動きを目で追うと、かなり遠く、視界が届くギリギリのテーブルに座った。母親の姿はなく、離席中のようである。その席から、ひとり泣いている僕が見えて、寄ってきてくれたようであった。
(あんな子供に心配されるとは)
僕は涙を拭いて、金平糖を口に入れた。
一粒なので、すぐにホロリと溶ける。
少ないので甘さもそれほど感じないが、幼女の心遣いが嬉しかった。
(あんなに小さくても、他人を心配する心を持っているんだなぁ)
良い子で、良い親だ。
僕はほっこりした気持ちになった。
(しかし、お星様が溢れた時って何だろな??)
金平糖が容器から溢れた時なのか、夜空の星の話なのか、涙を星に例えたのか。
とりあえず励まされた事はわかるので、僕も落ち込んでばかりいないで、彼女のためにも頑張ろうと思う。

3/15/2026, 12:51:08 PM