いぐあな

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SFファンタジー。300字小説。

君に幸いあれ

 銀河系辺境を旅していた僕は船の機体トラブルで地球に不時着した。
「燃料タンク、半量まで回復」
 地球人は良い人だった。機体から漏れた燃料の代用品をたくさんくれた。
「これだけあれば近くの宙港まで行ける」
 地球上からよく見た四分の一もあるという、大きな珍しい衛星が近づく。
 地球人が宇宙に飛び出したとき最初に訪れた星。それにあやかり、帰れますようにと僕も願いを掛けた星だ。
「月に願いを。あの地球人に幸いあれ」

「宇宙人を助けた? お前つくなら、もっとマシな嘘を……」
「いや、ちゃんと母星に着いたって、手紙も来たし」
 友人が呆れた顔をする。窓辺にいけた、共に送られてきた彼等の燃料だという星型の青い花が、風に小さく揺れた。

お題「月に願いを」

5/26/2023, 9:42:18 PM