狭い部屋の小さな窓を少し開け
こっそりと、外を眺める。
外は怖いから。
僕は、外には出られないから。
ここには、誰も居ない。
誰も来ない。
何も、聞こえないし。
いつから居るのか覚えてもいない。
けど、時折
誰かが部屋のドアを叩いた気がして
ノブの無い部屋の扉に触れると
涙が頬を伝うんだ。
懐かしい温もり
帰りたいような場所…
『ぉ、母さん?』
自然と口から出た言葉に
扉に目をやると、無かったはずの
ドアノブがキラキラと輝いてあらわれた。
ぁあ…僕は…そうか僕は…
ドアノブに手をかけ
狭い部屋に、別れを告げる。
さようなら。
きっとこの先には
大事な人が、待っているから。
【お題:狭い部屋】
6/4/2023, 11:43:10 PM