雨粒が、緑の葉を揺らす。聴こえてくる蛙の混声合唱に、私は窓の外を見やる。「はぁ……」 そのご機嫌そうな声と裏腹に、私は小さくため息をつく。この天気じゃあ、多分お客さんは来ないだろうなぁ。それに、何よりも棚の本が湿気るし。「君たちはいいよねぇ、雨の日に楽しそうで」 私は思わずそう一人ごちる。まあ、雨の日なんて楽しいわけでもないんだけど。 そう呟く私の視線の先には、紫陽花が雨に濡れて鮮やかに色付いていた。
6/13/2023, 10:23:19 AM