マクラ

Open App

『優しくしないで』

「優しくしないで」

伸ばされた手を、思い切り叩き落として言った。
僕は貴方が嫌いだ。
だから、僕にかまわないで。

「そっか、ごめん」

貴方は困ったように眉を下げて笑った。
それに僕はまた腹を立てる。
笑いたくなければ笑わなければ良い。
僕に対して怒れば良いだけの事なのに。

「……」

でも僕は貴方が嫌いだから、親切にそんなアドバイスなんかしない。
これ以上顔を見てイライラするのも嫌で、貴方を置いて教室を出た。
そのまま怒りをエネルギーに変えて、ズンズン進み屋上に出る。

「……」

放課後、誰もいない屋上。
僕は思わず叫びたくなったけど、フェンスを殴るに留めた。

(バカじゃないの)

その言葉だけが、ぐるぐる身体の中を回る。
貴方の困ったような笑顔が嫌い。
嫌ならはっきり嫌だと言えば良い。
他人に優しくして、裏切られて傷付いたみたいに笑わないで。
最初から他人になんて優しくしなければ良い。
他人なんてどうだって良いんだから。
そう、他人なんてどうでも良いんだ。

(……あぁ、腹が立つ)

なのにどうして、こんなに貴方が腹立たしいんだろう。

「バカじゃないの」

笑うなら、楽しい時だけ綺麗に笑えばいいのに。

ーーー
体調不良文にも♡ありがとうございました。

5/2/2024, 10:15:30 PM