24

Open App

▶89.「帽子かぶって」
88.「小さな勇気」
87.「わぁ!」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
---
誰が行くかで揉めとったが、
しばらくして決着がついたようじゃ。

「骨は拾ってくださいね…!」
「この恨みは高くつきますよ…」
それぞれ捨て台詞を残しつつ、地下通路に入っていった。

「よし、わしらもやるぞ」

日光取り込み装置『瞳』が開いたことで、日光から動力を作れるようになっているはずだ。そうなれば、いずれ施設内設備が起動できる。

「索敵と地下通路の確認、それから設備の起動確認。この3つを一定時間ごと、順番にこなしていくぞ」
「はい」

ゼンマイ式のタイマーを取り出して3周回す。
「一刻半ごとでよかろ。さて、これからは軍が来るまでの長期戦じゃ。ヤン、水の確保を頼む」
「わかりました。ではすぐに」
「ああ、そうじゃ。寒いから、こっちの帽子かぶってけ」



一方、送り出された部下2人は王宮に帰り着き、軍の窓口で応援要請をしていた。

「だから、昨日も言っただろう!うちの課長に軍から応援連れて来いって指示受けたんだって!」
「正式な指示書もなく、しかも捨てる予定のガラクタと閑職じじいを相手に軍を出せと?」
「ああ、もう下っ端じゃ話にならない!もっと上のやつ出せ!」
「それならあんたたちこそ課長を連れて来ればいいだろう」
「はあ!?」
もう言葉も出なかった。

「なあ、やっぱ無理だよ。一旦戻って考えよう」
「…くそっ」



「おい、あのじじいはどうした」
「あっ、ジーキ課長。実は…」

悔しい思いを抱えながら技術保全課に戻る途中、
行き会ったのは軍事記録課の課長だった。
俺たちとそう変わらない歳なのに威圧感がすごい。
でもメインは同じ事務仕事なんだよな。

確か、うちの課長に言われてF16室に関する記録を調べてたけど、
当時、王の交代を始めとした状況の激しい変化に大混乱だったとかで、対フランタ技術局から廃棄したって連絡を受けたのをそのまま記録したらしい。この辺はうちと変わらない。今は前後の記録から背景を探っている最中だそうだ。

「俺が行こう」

事情を話したら、ついてきてくれることになった。
ジーキ課長の威圧効果は抜群で、すんなり話が通った。

「あの、ジーキ課長。ありがとうございました」
「じじいに借りは返したと伝えとけ」

礼を言ったら、颯爽と去っていった。

「借りってなんだろうな。ま、おかげで助かったな」
「ああ…いつか俺も、あんな風になれるかな」

無言で優しく肩を叩かれた。首も振られた。
ちょっと憧れるくらいいいじゃないか。ちくしょう。




「将軍、ご報告が」
「聞こう」

その報告は、オレが待ち望んでいたものだった。

ついに、この日が来た。

オレは軍帽を深く被り直し、
気持ちを落ち着けようと窓の景色を眺める。

その間、直属の部下はじっと控えている。
なんて心地がいいのだろう。

満足したオレは窓から離れて、
命令書を記入するため執務机の椅子に座った。


「技術保全課への支援は、離れているとはいえ王宮の施設だからな。第二隊から、これは班2つで構わんだろう。それを派遣する。適宜交代させろ」
「はっ」

「それから、国境警備の強化。これが敵の仕業なのかすら分かっていない。ならば第三隊の訓練強度を上げて隊員どもを鍛え上げろ。あとは第四隊の半分を使った増員編成案を出せ」
「かしこまりました」


命令書を受け取った部下が部屋から出ていく。

「刀は、研ぎ澄まされてこその刀だ」

1/29/2025, 9:39:06 AM