はと

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「どうもありがとう」

そう言って滞在していた村を後にする。
皆もっと居たらいいのに、と言ってきてくれて、なんて優しい人たちだろう。
滞在時も全く知らない私を受け入れてくれて、宿もない小さな村なのに家に泊めてくれる人達もいて。

──ああ、ここに骨でも埋めようかな。なんて。

思ったけれど、私はこんな所で足を止める訳にはいかないんだ。
村を少し行ったところで、懐中時計を見る。止まっていた針が、僅かに動いた気がして思わず笑みを浮かべた。

私は旅を続けなければいけないんだ。
旅を続けて。私は。

「もう少しで取り戻せるか、まだ先か」

果ての無い私の旅は、一体どこまで続くのだろう。
(旅は続く/20250930)

9/30/2025, 2:04:41 PM