『旅路の果てに』
もしも今、この瞬間に私の人生という名の旅が終わるとしたら、その「果て」には一体どんな景色が広がっているのだろうか。ふと、そんなことを考える夜がある。
私の想像の中にある終着点は、どこか静かな海辺のような場所だ。波の音だけが響くその場所で、私はゆっくりと後ろを振り返る。そこには、これまで歩いてきた長く曲がりくねった道が、地平線の彼方まで続いている。
道端に咲いていた名もなき花のような些細な喜びや、ぬかるみに足を取られて動けなくなった日の苦い記憶。当時は永遠に続くかのように思えた苦悩も、こうして「果て」から眺めてみれば、美しい景色の一部として溶け込んでいる。すべては、この場所にたどり着くために必要な一歩だったのだと、穏やかな気持ちで肯定できる気がする。
──けれど、ふと顔を上げれば、目の前にあるのは静かな海ではない。
使い慣れたデスクと、明日の予定が書き込まれた手帳、そして中途半端に書きかけのレポートが散らばる、ありふれた現実だ。
私はまだ、旅の途中にいる。
想像したような「果て」は、今の私にはまだ遥か遠い場所にある。あるいは、そんな場所など存在せず、ただひたすらに歩き続けること自体が旅の本質なのかもしれない。
ここから先に続く道は、濃い霧に覆われていてよく見えない。一寸先も見通せないその頼りなさに、足がすくむこともある。選んだ道が正しいのか、行き止まりではないのかという不安は、常に私の背中に張り付いている。
しかし同時に、その霧の向こう側に、まだ見たことのない絶景が待っているかもしれないという期待も捨てきれないのだ。
旅路の果てに何があるのか、今の私にはまだわからない。
だからこそ、今はただ、この霧の中を手探りで、けれど確かな足取りで、また一歩踏み出してみようと思う。その答え合わせができるのは、まだまだ先の話だ。
2/1/2026, 5:58:16 AM