急にすべてがどうでもよくなった。さっきまでどうやって逃げようか愚考を巡らせていたのに、ついにそれさえ諦めた。
ドンドンドン、ドアを拳で叩く音がする。大家か、借金取りか、それとも真弓が帰ってきたのか。
「祐二、開けて!誰か上がってくる!早く!」
真弓の声だ。だがこれも俺の幻聴かもしれないし、敵の罠かもしれない。俺は床に大の字のまま、時が過ぎるのを待った。
ずっと恐怖に囲まれてきたから、今は気分が良い。天井の木目が何に見えるか、考えているだけでいい。幸せだ。
どれだけそうしていただろうか。ふと、起き上がりたくなった。上体を起こすと、頭がフラフラする。思い出したかのように腹が鳴った。
いやに静まり返っていた。あのけたたましいノックはいつ止んだのだろう。外の様子を確認したくて、ドアを開けた。
目の前には……。腰が抜けて、座り込んだ。
あの時、どうでもよくならなければ、助けられたかもしれない。これからどうすればいい?警察に通報しても、俺が逮捕されるだけで、真弓は帰ってこない。逃げたって、元通りの毎日だ。
俺は再び大の字になった。急にすべてがどうでもよくなったのだ。
11/21/2024, 9:10:47 PM