百瀬

Open App

“教授、一口もらってもいいですか?”
下がり眉と潤んだ瞳。見事に撃ち抜かれた私は、まだ口をつけていない方を彼女に向けた。小さい一口と控えめに覗く舌に色気を感じ、思わず目を逸らした。
“美味しかったです。私のもどうですか?”
差し出されては断れない。溶けるクリームを舐め取れば、重たい甘みが広がる。
「綾音くん、君はどんな味がするのかい?」

Title
「眩む線引き」

Theme
「夏」

6/29/2024, 7:57:45 AM