「何を悩む必要がある。」
それは、冷酷にも身内から言われた言葉だった。
嗚呼、この人は私と違う世界を生きている。
そう思わずには、居られなかった。
あの優しい兄は、もうそこには居なかった。
あの優しい兄は、もう見知らぬ人だった。
時の流れとは、常に残酷だ。
そう、祖父から聞いた。
嗚呼、あの言葉は本当だったのだ。
何が、否、何時からだ。
私は、何故、兄の変化に気付かなかった。
私は、今まで何を見ていたのだろう。
虚構か、将又、せん妄か。
私は、人が変わる様を……、人が適応する様を……、
知らなかったのだろうか。
私の知る兄に、何時から化かされたのだ。
嗚呼、私は何と愚鈍なのだろう。
私には、才が無い。
初めて、そう実感した。
私のような人間を、この世界ではカモと称すのだろう。
私のような人間は、この世界ですぐさま喰われるのだろう。
私は、この先、生きられるのだろうか。
それは、天帝にしか分からない。
きっと、こうして信仰は生まれたのだ。
11/12/2025, 10:18:47 AM