彩士

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「あーした天気になぁれ!」
高らかに声をあげるのと同時にその娘は、靴を高く蹴り上げた。
その娘の身長の何倍も高く上がった靴は、放射線状の弧を描いて地に落ちる。
横吹く風に吹かれながら、その娘は片足のケンケンをして靴を拾いに行った。
真っ白だった靴下の裏は、時々地面についたのか黒く汚れている。
その娘は一人だった。

そんな様子を窓から見ていた。
勉強ばかりの日々。親に受験することを強制されて、楽しくもないことだけをする。
友達は家に遊びに行って楽しく遊んでる。
内心でいいなぁと思いながらも学校での優等生キャラを保っておかなくてはいけない。
休み時間に騒いで、流行りのことを話して、先生との会話だって親しくしたい。
礼儀正しく、みんなのお手本になるような、他人につられない、先生に頼りにされる人間になってきた。
いつだって内申のために。

そうやって過ごしてきたら、いつのまにか大学生になっていた。最近は、友達と呼べる子とショッピングに行ったり、小旅行に行ったり楽しいことができている。
一人暮らしを始めて、親の目の届かないところにいれば好きなことを好きなだけ、することができた。
今はとても楽しい。
でも、昔の子供のころ特有の遊びを私は未だかつてできていない。当然だけど。
塾に行かない日なんて珍しかった私の学生時代。
取り戻すことはできないけれど、あの子と遊んでみようかな。不審者に間違われるかな、それはちょっとやだけど。


また明日、あの子の願い通り、「天気」になったら、

8/1/2023, 12:02:12 PM