水蔦まり

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幕 間 そして、娘は姿を消した
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 京の都には、歴史の深い由緒ある祭りがある。
 伝統により、今代も京の都にゆかりのある未婚女性から、祭りの主役である巫女が選ばれた。
 

 そして着々と祭りの準備が進む中、奇妙な事件が勃発する。
 主役である、巫女の誘拐だ。



 直前、十二単を着た美しき巫女と従者たちは、小川で心身の穢れを祓っていた。儀式には、巫女と五十程の従者による女人列が、境内の川にて臨んだという。

 
 そしてその場にいた全員が、こう口を揃えた。
 怪しい人物は、一切見当たらなかった――と。



 祭りには新たな巫女を迎えて行われたが、誘拐された娘が京の都との関わりが深く、由緒ある家柄の金持ちの令嬢だったためか、日本は疎か世界中でこの事件が報じられた。


 未だ懸命な捜索が続けられているが、目撃証言や証拠が一切残されておらず、世間では「自作自演?」「駆け落ち?」「神隠し?」などと、令嬢の名誉を穢す声も上がっているという。



 残された家族は、お気に入りだったという花壇に水をやりながら、娘の帰りを待ち続けている。

 二十歳になった娘は、まだ見つかっていない。






#お気に入り/和風ファンタジー/気まぐれ更新

2/18/2024, 9:40:04 AM