不知火

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暗い世界、黒の世界に独り

歌の声は次第に細り溶けて消えていった

胸に抱いたお菓子缶に透明の雫がポタリ

静かな海の潮風がふわりと頬を撫でた


 無理やり蓋をしてずっと押し込めていた

 何度も何度も開けたくなった

 きゅうっと痛む心臓を楽にしてあげたい

 でも自分で決めたことだから


そう言って蓋の隙間から漏れ出たオレンジ色の光を押し込めた


 でもこの愛情はどんどんあふれてあふれて

 切なくて苦しくて胸が締め付けられた

 何よりも大事だったのに、お互いの優しさで離れた

 本当はもう一回を望んでいる

 けれどもう忘れられてるか


画面の向こうで見た背中が、あの頃よりも逞しくて

光るオレンジ色をまた閉じ込める

輝きを取り戻したくて、でも突き放したかった


元気?と大好きだよを直接言えたならと繰り返し願う



遠くへ行ってしまったあの子を覚えている

もう簡単に触れ合うことはできない場所にいる


動物園にいる愛おしいあの子のことを





【輝き】

2/17/2025, 5:08:39 PM