カナイユラ(叶依夢蘭)

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「この街も都会になっていくのかな」
この街唯一の街灯をみながら呟く。
「私が死ぬ頃にはもっと明るくなってるね」
彼女は病気でもう一ヶ月もしたら死ぬと言われている。

ここは長年田舎だったが最近人が増えてきて、最近では珍しい全く街灯が無かったこの街に街灯工事がはいった。
半年後にはこの街全体に街灯ができるらしいが、彼女はそれを見届けられない。手術をして成功すれば生き残るらしいが、成功する確率が極端に低いことから手術をやめたらしい。

ー1週間後ー
彼女は死んだ。予想よりもずいぶんと早く。もっと話したいことがあったのに。

それから時は流れ街灯も全部できて幾つかビルのようなものができた。その写真を撮って彼女の仏壇に手を合わせる。写真を供えて。「もっと話したかった」と言えば彼女がそこで「私も」と微笑んでいるような気がする。

そして僕は自殺した。彼女に街を見せるために生きていたから。

お題…街の灯り

7/8/2024, 11:22:15 AM