SAKURA・Lemon

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__ごめんね__


初めて大喧嘩した夜、思わず家を飛び出してしまった。
数時間程経って、私を見つけてくれた。まだ怒っているらしい。君は私を、物凄い目で睨んでいる。そりゃそうか。
「…どこ行ってたんですか…」
そう言って、私の手を掴んで、家に帰る道を歩く。やっぱり怒ってる。こんな時間に迷惑かけるな。って言いたいんだろうな。
でも君は、黙って私の手を引く。
外の景色はもう暗くて、私が飛び出した時よりも凄く暗くなっている。車の音が聞こえるのに、なぜか凄く周りがシン…っとしているような気がした。そのせいで、君の荒い息の音が聞こえてくる。私の事をどれぐらい探し回ったんだろう。
"ごめんなさい。"
言わなきゃ。言わなきゃいけないのに、声が出ない。
手を引っ張る力が弱くなるのを感じた。ちょっとだけ緊張がほぐれて、ふと空を見上げた。夏の夜空には、星が細かく散りばめられたみたいになっていた。月も雲ひとつない空だったから、私たちを思う存分照らしていた。
「空、綺麗だね。」
ごめんなさい。でも、ありがとうでもない発言に、君は思わず振り向いてしまったかのようにこっちを見た。そしてすぐに前を向く。
「誰かさんが突然いなくなってずっと探して走り回ってたから。今、初めて空見た。」
「そ、そっか…」
「…夜遅くに家を出るのはやめろ。危ないだろ。」
「うん…。その、どのくらい探してくれたの…?」
「…さぁな」
そう言った君の斜め後ろからみた君の横顔は、いつもの優しい顔に戻っているように見えた。私が家を出ていってから、数時間程経ってる。その時間ずっとに探し回ってくれたんだよね…。
「…今日はごめんね。」
謝るのってやっぱりちょっと意地が出ちゃって、ちょっぴり照れ臭い感じ。でも、言うなら今だと思って、言葉にした。
「いや…俺も、その…悪かった。」
ぎこちなく言う君。そんな君を見て、なんだか嬉しくなって握っていた手を少し強く握った。さっきまで君の後ろを歩いていた歩幅を、同じくらいにする。
謝るのって簡単に見えて、実は凄く難しいものだね。
でも、謝った後のもっと好きになれたな、と感じるこの安心感。なんて言えばいいんだろう。でも、今日の喧嘩とごめんねでもっと好きになれた気がする。
互いに仲直りをし、夜空を見ながら、ゆっくりと夜道を歩いて家に帰ったとさ。

5/29/2024, 1:51:36 PM