IROHA

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『二人ぼっち』


少し開いた窓から優しく冷たい風が入る。
目を閉じて息を吸って、
それを身体中に染み込ませてから
読んでいた本を机に置いた。
目の前に置かれていたカップから、
微かに白く弱い湯気が立つ。

「冷めちゃった?」

口に含む前に聞かれたので、
何も言えずに声の主を見つめた。

「冷めてると思う」

そして、少し飲み込んで

「まぁ、まだ少しは温かいかな」

と、強く湯気を立たせているポットを持つ彼女に手の平を向けた。
入れ直してくれようとしていたけども、私は猫舌なので『ぬるい』くらいがちょうどいい。

こんな感じの、まだ『ぎこちない』私たち。
なかなか周りからは受け入れ難いようだけど、
このまま、ゆったりと過ぎる時間を二人で過ごすのはとても素晴らしいことだと思う。

一人ぼっちだった私たちが、二人ぼっちになったのはごくごく自然なことだから。

3/22/2023, 1:49:33 AM