匿名。

Open App

暗がりの中で



「くらいところはきらいなの!
 だっておばけがでるじゃない?
 しょーちゅーこうせいになっても、
 おとなになってもきらいだとおもうなあ」

『そんな小さい頃の日記を見ていた私。
 現在停電中の自分の家にいます。

 外では雷がゴロゴロ鳴っていて、
 停電してしまっているので友達にも
 連絡ができませんし
 何より一人暮らしなのです…
 どうしましょう…雷は大の苦手なんです!!!』

と、漫画のようにそう心の中でぶつぶつと言っていた。


ゴロゴロゴロピッカァァァァァァァァァン(※雷の効果音のつもり…)


「ひぇっ…!」


 誰か助けに来てくれないかな、なんてことを考えながら半べそをかいて1人部屋で小さな悲鳴をあげる。


ゴロゴロゴロォォォォォォォン(※雷の効果音のつもり…!!)

「ひぃぃっ…!うぅっ…」


もう限界。泣いてしまう。そんな時だった。


ピンポォォォォォォン(※インターホンのつもり…)


「え…こんな時に?誰…?────はい」

 扉を開けるとなんと私の好きな彼が目の前に。
私はびっくりして腰を抜かしてしまった。

 彼は「どうしても心配で何も持たずに来てしまった」と言った。

「ふふっ」

いつも真面目な彼がそんなこと言うなんて、面白くてついつい笑ってしまった。

「ごめん、真面目なあなたがそんなこと言うなんて
 面白くてさ」

変な意味で笑ったわけじゃないよって伝えたくて、 そう私は言った。


 彼の表情は暗くてよく見えない。でも、きっと優しい顔をしているんだろうな。
なんて思っていたその時────唇に何かが当たった。




そう、彼は暗がりの中で────私にキスをした。







     ──────フィクション───────

10/28/2023, 1:10:27 PM