僕にとってここは監獄であった。チャイムがなれば三十人がせまい部屋に押し込められ、言葉を発することさえ僕にははばかられる。息を殺してその日が僕にとって何ごともない日にするために全神経を注いだ。ふたつ隣の席で人が殴られていようが、トイレの個室がひとつだけ水をかぶっていようが関係ない。
だけど、すり減らないように生きてきたはずなのに、どうしてこんなに疲れているんだろう。そんなことをぼんやり考えていたら、お弁当のからあげを落とした。僕は何もかも嫌になってしまった。
次の日、僕は家から持ち出した包丁で目についた生徒を全員刺してまわった。僕の世界が僕によって終わっていく。
「ハハ……なんてチンケな物語!」
パソコンの前でそうつぶやいていた。ほんとに出来たら、さぞ清々しい気分だったろう……。
母親の字で『30歳おめでとう』と書かれた手紙は捨てて、甘ったるいショートケーキを喉に押し込んだ。
11/1/2024, 4:31:18 AM