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ふと思い出した場所に片っ端から足を運んでみようと思った。何となく、ただの思いつきだ。意味も恐らく、無い。休日に、昔地元の遊園地に連れて行ってもらったな、と思い出し、財布と鍵を持って車を走らせる。遊園地はすでに閉園していた。寂れた廃虚のような跡地であったが、門前から見えるアトラクションを眺めていると懐かしい記憶が思い出される。
メリーゴーランドで馬に跨り、両親に手を振った。両親は互いに何かを言い合っていて、ついぞ手を振り返してくれることはなかった。
コーヒーカップに乗り込んでハンドルを回した。回せば回すだけ回転が速くなるのが楽しくて思わず笑い声を上げたが、両親は不愉快さを眉間に刻んでこちらを睨んでいた。
ジェットコースターには身長制限があって乗ることができなかった。
代わりに連れて来られたお化け屋敷で、両親とはぐれてしまい、泣いてしまった。通りすがる大人たちも、スタッフも、誰もこちらを見向きもしてくれない。ただただ恐ろしくて、泣いて、出口に向かって走った。
出口には両親の姿はなかった。

あれ、あの後どうやって帰ったんだっけ……?

曖昧な記憶に、心臓が嫌な高鳴り方をする。思い出そうとすればするほど、頭が痛くなる。消えかけの地図で懸命に行き先を探ろうとするかのように、一つ一つ思い出そうと試みる。しかし、目眩がして、それも出来ずに終わった。

6/16/2025, 3:12:13 PM